リクライニング? ロッキング?

 オフィスチェアは通常、リクライニング機能とロッキング機能とを併せ持っています。ところで「リクライニング」と「ロッキング」との違いは皆さまご存じでしたでしょうか? 各メーカーのカタログを参照してみても、この点を説明している箇所は特に見当たりません。むしろ、あるメーカーはリクライニングと、またあるメーカーはロッキングとそれぞれ表記を統一している傾向があり、それでいて、両者が同じ機能を表現しているようなんですね。実際のところ、オフィスチェアについて考えるにあたって、両者を区別しなくても特に支障はありません。

 ですが、調べてみますと、両者の発祥には明らかな違いがありました。これらふたつの機能がオフィスチェアに搭載されていく途上で、オフィスチェアに関しては結果として両者の区別が不明瞭になっていった、というのが経緯になっているようです。



リクライニングとは

recline 【動詞】【自動詞】



1 〔+前置詞+(代)名詞〕〔…に〕もたれる,寄りかかる; 横になる 〔against,on〕.

2 〈座席が〉後ろに倒れる.



≪リクライニング機能とは≫

 中長距離の交通機関(電車・高速バス・飛行機など)の座席で、サービス向上のために導入されたのが始まり。機械式と油圧式シリンダー式とがあり、機械式は段階的に、油圧式は任意位置で(無段階的に)背面の角度を固定する機能です。チェアの背座面が、ある固定の位置で傾きを止める機能をリクライニングといいます。

 オフィスチェアや全天劇場用では背中を押しつけて傾けるだけのものも多いといいます。この場合、席をはずすとバネなどの力で元に戻ります。



ロッキングとは

rock 【動詞】【自動詞】



1 (前後[左右]にやさしく)揺れる.

2 振動する.

3 〔+with+(代)名詞〕〈人などが〉〔興奮・感動などで〕動揺する,感動する.



≪ロッキング機能とは≫

 1700年代初頭のイギリス植民地で、庭で使うチェアの脚を三日月状にし、揺らして座れるようにした安楽椅子(ロッキングチェア)が始まり。1800年代中盤、ドイツのトーネット社が木材を蒸し曲げて成型した安楽椅子を打ち出して世界中に流行、多くのデザイナーがロッキングチェアを手がけました。

 チェアの座背面が固定せずゆらゆらと揺れる機能をロッキングといいます。



1950年代 現代的オフィスチェアの誕生

 オフィス家具のスチール化が始まったのは1900年代の初頭で、それまではデスクもチェアも木製が主流でした。木製のオフィスチェアは構造や素材の性格から、リクライニングもロッキングも難しかったと想像されます。また、リクライニングやロッキング機能をオフィスチェアに付与する際に大いに参考にされる人間工学(“エルゴノミクス”もしくは“ヒューマンファクター”)は、第二次世界大戦を契機に興った科学です。よって、二次大戦に前後してリクライニングやロッキング機能を備えた現代的なオフィスチェアが開発されたものと思われます。



 戦後、1950年にオカムラが米軍より受注し生産した「2201型」は米軍の仕様書に基づき開発されたものですが、これはすでにロッキング機能を搭載していました。また、ハーマンミラー社が1958年に発売した「アルミナム」シリーズもリクライニング機能を搭載していました(初期のものはボルトで背面の傾きを調節する方式だったようです)。



リクライニングとロッキングの融合

 オフィスチェアがリクライニングとロッキングの両者を兼ね備えるに至った大きな契機として、素材・エンジニアリングプラスチックの登場が考えられます。これによりそれまでスチール製だったオフィスチェアの軽量化が実現され、これに伴い、機械式(つまりスプリング式)だった機構の油圧シリンダー式への移行も実現されます。これにより、ロッキング上の任意位置でのリクライニング固定が可能となりました。

 リクライニングとロッキングの双方が同時に機能を発揮できるようになり、両者の間の区別も不明瞭になっていきました。座り心地・使い心地がよければ、呼び名はどちらでもよい事ですね。