国産「後傾オフィスチェア」の金字塔、エルシオ

 オカムラの2013-2014総合カタログに、すでにエルシオの掲載はありません。とはいえエグゼクティブチェアとしてのエルシオの需要はまだあるようで、即生産終了というわけではないのですが、今後緩やかに収束していくのは間違いないでしょう。これはとても寂しい事です。というのも、エルシオは発表当初に「究極のオフィスチェア」と評する声もあったほどの、画期的なチェアだったのです。

 PC作業を行う姿勢について考えてみると、短時間集中して行う場合はやや前傾の姿勢が、長時間継続して行う場合は後傾の姿勢が適している傾向があります。そしてオフィスチェアは一般に、前傾と後傾の双方ともを広くカバーする事ができません。

 エルシオは、オカムラがその後にコンテッサそしてバロンへと繋げていく、後傾に特化したチェアのひとつの完成形であったといえます。その機能性は今なおもって、全く色あせてはいません。しかし、海外展開を意識して開発された後継シリーズにしっかりとノウハウを継承し、製品としての役目を果たしつつあるという事なのでしょう。早い引退が惜しまれる限りです。

エルシオの凄いところ

 赤坂にある「オカムラ椅子の博物館」には、「シーティング・シミュレータ」という装置があります。座面高・座面奥行・座面角度・背面角度を自由に調整できるチェアで、どのパラメータがどの数値の時、着座者の体重からチェアの座面と背面のどの部分にどの程度の圧力がかかっているかを測定し、モニターできる装置です。この装置が科学的に有効であるためには、どのような体格のかたが着座しても、座面・背面が充分にその人の体重を受け止められる構造である必要があります。そして、この「シーティング・シミュレータ」の座面・背面には、エルシオのものが使われています。

 エルシオにもローバックとハイバックとがありますが、エルシオのローバックは一般のハイバックに相当するサイズです。エルシオのハイバックはヘッドレストが付属したものになります。つまりエルシオは、ローバックであってもユーザーさまの背中をしっかりと受け止めるのです。



 昨今、座面の奥行きを調節できるオフィスチェアが多く発表されるようになってきました。調整できる範囲は概ね40㎜~60㎜が一般的です。エルシオの座奥調節範囲は80㎜で、リープチェアの75㎜とツートップとして群を抜いています。(統計データから考えれば、100㎜あってもいいくらいでもありますが)



 エルシオを後傾チェアたらしめているリクライニング機能についてですが、エルシオの最大リクライニング角度は24°で、これを15段階で設定できます。感覚的にはほぼ無段階に近いでしょう。しかもエルシオは、「最大リクライニング角度」だけでなく、「リクライニング開始角度」も設定することができます。例えば、背面を予め約10°後傾した状態に設定しておけば、リクライニング範囲が10°~24°のエルシオとして使用する事ができるのです。この機能が搭載されたチェアを他に知りません。もちろん、リクライニング角度を固定することもできます。



 ハイバックに付属するヘッドレストも座背面と同じくしっかりした作りで、かつ角度調節範囲も23°と、バロンのヘッドレストの20°よりも大きく取られています。なお、標準搭載されているランバーサポートは、15㎜ピッチで5段階に調節できます。



 エルシオは後傾のオフィスチェアの中ではトップクラスの使い勝手と座り心地を誇っています。

終わりに

 「重い」「大きすぎる」「デザインが洗練されていない」といったネガティブな評価の声もありますが、ユーザーさまの体格に合わせた調節のフレキシブルさにおいては、むしろ、コンテッサやバロンの上を行っているかもしれません。オカムラが取り組み続けてきたチェア造りの、ひとまずの集大成であったといえるでしょう。しかも驚く事に、エルシオに専用のオットマンを併用すれば、この座り心地がさらにもう一段階上がるという評判も聞きます。



 知る人ぞ知る名作エルシオ。カタログから姿を消しました以上、今後の露出は逓減していくと思われます。もし幸運にもお見かけする機会がありました際は、ぜひこの「究極」と呼ばれたチェアをお試しください。