オフィスチェアの選び方

 個人さまでご購入される場合は、根気よく店頭やショールームで試座を重ね自分に合うオフィスチェアを探される事を強くお薦めいたしますが、法人さまでご一定以上の脚数をご購入という場合は、必ずしもそうはいかない事になります。今回はそういった事情を鑑みた上で、中古でオフィスチェアを選ぶ際のポイントを紹介していきます。

おさらい:オフィスチェアの基礎知識

 オフィス家具の中で、最も選ぶのが難しいのがチェアです。たゆまぬ研鑽が積まれている人間工学に基づいて設計されたエルゴノミクスチェアでも、すべてのユーザーさまが満足されるという事はありえません。

 人間の体は二足直立歩行に特化しています。座っている方が楽に感じますが、実際に負荷が減っているのは脚から下だけで、背中や腰にはむしろ立位比較で約40%の負担増になっているといいます。

 欧米人に比べて背筋が弱く、またチェアに座る歴史的な習慣が浅い日本人は、チェアに深く腰かける事が苦手です。そのため、浅く腰かけて骨盤が後傾し上体は前のめりになる、いわゆる「猫背」の姿勢で座ろうとする傾向があります。猫背での着座は、骨格ばかりでなく内臓や脳や呼吸にも悪影響があります。

 オフィスチェア選びの最大のポイントは、いかに猫背を解消し、体への負担を減らすかに尽きます。

余談:負担の小さな着座姿勢諸説

 では具体的にどのような座り方をすると負担が小さいのかというと、様々な説があるようです。体幹と大腿部のなす角度が120°前後で背骨のカーブが理想的なS字型になるという説があります。いや100°が自然な角度であるという説もあります。いやいや自分がその時に楽な姿勢がいい姿勢なのだという説まであります。

 3つめの説は少々眉唾に聞こえますが、根拠を聞くと参考になります。曰く、「そもそも、人間は生理的に同じ姿勢を保持し続ける事ができないようになっている。座るという事は、座面がお尻の筋肉を圧迫するという事だ。筋肉の血流が悪くなるため、同じ着座姿勢を続ける事は好ましくない。つまり、人間は好きな姿勢を取っていても、都度つど座りなおして姿勢を変えればいい。」 こういわれると、腑に落ちる気がしますね。

中古でオフィスチェアを買う時の指針ふたつ

 中古でオフィスチェアを購入する際には、大きなメリットがあります。それは、主要メーカーの製品を安価に購入できる事です。そして、主要メーカー製品にもまた大きなメリットがあります。ひとつは普通に使えば10年程度の使用に耐えられるよう設計されている点、もうひとつはメーカーのショールームやオフィス家具店舗で試座ができる点です。※ただしオフィスチェアの法定耐用年数は8年、メーカーの品質無償保証期間は最大3年です。



 これを踏まえると、中古オフィスチェアを買う時、大きな指針がふたつ浮上します。



(1)多機能・高機能なものを買って機能をフル活用して座る。

(2)スタンダードなものを買って、座り方は自分で工夫する。



(1)は「新品に比べて非常に安価なのだから、機能性の高いものを買おう」というかた向け、(2)は「高価なものがよいものとは限らないのだから、標準的なものを買って自己流にアレンジして座ろう」というかた向けです。どちらの考え方もあってよいと思います。実際、双方のニーズに応える製品を、今もメーカーは送り出し続けているのですから。

中古オフィスチェアを選ぶポイント:基礎編

○背もたれは、ローバックよりもハイバック



 背骨と肩甲骨を曲げる前屈み姿勢、「猫背」でオフィスチェアに着座する事に慣れてしまっている傾向のある我々日本人は、ともすればチェアの背もたれの存在まで忘れがちです。背もたれを活用できる最大のシーンは、ずばり休息時です。休息はごく短時間でもよいのです。例えばPCの起動時やメールの受信時など、ほんのささやかな時間ですが手が空くシーンがあります。こういう時に、背もたれにゆったりと体を預ける習慣を持つだけで、体の負担を癒すだけでなく、猫背を矯正する効果もあるといいます。

 また、もし背中が全面的に背もたれに接した姿勢で執務ができるのなら、背もたれは執務姿勢をサポートし、ユーザーさまの体圧を分散してくれます。これにより、腰椎や骨盤から下への負担も減る事になります。

 上記2点のどちらについても、ローバックよりもハイバックの方が、より効果的である事になります。肩甲骨の高さまでカバーされるエキストラハイバックならなおいいでしょう。ただし、先述したように日本においてこれまでオフィスチェアの背もたれはさほど重要視されてこず、ために中古市場での流通量はローバックが主流の傾向があります。法人さまの大量導入時には、ハイバックで在庫が揃う店舗を根気よく探される事をお薦めいたします。









○座面はオフィスチェアの命

 座面は体重を最大に受け止める部分で、オフィスチェアの座り心地を大きく左右します。クッションには体をサポートし動きを妨げない適度な硬さと柔らかさが必要です。また、座った瞬間に尻打ち感がないよう、クッションだけでなく上下昇降機構にショック吸収機能が織り込まれているものがいいでしょう。

 座面前辺部は、長時間着座すると大腿部の血行を阻害する事があります。特にメッシュチェアは構造上、座面の周囲に硬いフレームが巡っており、これが大腿部にあたると座り心地を著しく損ないます。座面前辺部がやや下向きにカーブを描いているものがお薦めです。







○肘の有無・形状はワークスタイルと合わせて



 もしオフィスが必ずしも広くない場合は、チェアに肘があると立ち居振る舞いの邪魔になる場合があります。また、頻繁に席を立たれるかたの場合も、肘がない方が動きやすく便利であるでしょう。

 肘には固定肘と可動肘があり、固定肘に関しては、シリーズによっては複数の形から選べる場合があります。日本製シリーズの固定肘は、チェアをデスクの下に収納できるくらいの高さであるため、休息時に腕を置いて休ませるのに用いるのと、立ち上げる時に手をかけるのに利用するのが主な用法でしょう。一方、可動肘はワークスタイルに合わせて適切にカスタマイズすれば、チェアの機能性を一段階上げる事が可能です。詳細を『肘調整機能(高さ、肘角度、左右・前後スライド) 』の項で述べておりますので、併せてご参照ください。

中古オフィスチェアを選ぶポイント:応用編1 チェアを体に合わせる

○そのオフィスチェアは前傾姿勢向きか後傾姿勢向きか



 オフィスチェアは働くためのチェアです。そのため、休息するための機能より、巡航するための機能の方がより重要であるといえます。執務姿勢は、仕事の内容やユーザーさまの体格・体型により、前傾と後傾とに大別できます。オフィスチェアにも前傾姿勢や後傾姿勢をサポートする機能がついていますが、残念ながら両方の姿勢を完全にサポートできるチェアは存在せず、前後のどちらかに特化しています。

 ユーザーさまのワークスタイルは前後どちら寄りなのかと、買おうとしているチェアは前後どちら寄りなのかとの、すり合わせは必要になるでしょう。







○試座はワークスタイルを想定して



 店頭などで試座をされ、座り心地や機能を確かめつつ、買うべきオフィスチェアをご検討いただく。これはとてもありがたい事です。ただしそこにつけ加えますなら、「デスクの高さはイメージされてますか?」「執務姿勢はお考えですか?」「ふだん連続で何時間くらい着座されてますか?」

 オフィスチェアはオフィスのチェアです。執務用のチェアなのです。仕事とデスクがあるからこそオフィスチェアなのです。試座は少なくとも30分、可能であれば1時間以上、執務上の様々なシーンを思い描いてお座りください。そのチェアが、ご自身のワークスタイルに合っているか、ご自身のワークスタイルや環境、はチェアの特性を十二分に活用できるのか、よくご検討ください。調節機能の多いものは、自分のスタイルにフィットする形に調節できるかをお確かめください。



 なお、試座できる場所が遠くて試せない場合は、無難な形の布張りのオフィスチェアを選んでおけば、大きなハズレはあまりないかと思います。

中古オフィスチェアを選ぶポイント:応用編2 体をチェアに合わせる

 主要メーカーのロングラン製品は、今でも新品が販売され続けており、また、発売から長い事もあって中古市場でも活発に流通しています。こういった標準的な製品は、過不足のない必要十分な機能を備えています。

 高価な製品は、調節機能が多い傾向があります。一旦自分のワークスタイルにフィットする形に調節できたら、以降は調節機能はほとんど不要になる事になります。

 ならば、標準的なオフィスチェアを買い入れて、座ってみて、不都合な点が上がってきたら、座り方の方を工夫してみるという考え方があってもよさそうです。



 例えば、座布団1枚で座り心地が格段に向上する場合もあります。体圧分散の原理で腰部にかかる圧力が下がり、腰部周辺の血流が改善されるのです。背もたれと背中の間に隙間ができる場合は、クッションを間に挟むことでランバーサポートの役目を果たします。専門的なアイテムとしては「骨盤座布団(登録商標:臀部相似型クッション)」というものが存在するそうです。

 デスクの下、つまり足元も見逃せないポイントです。多少でも脚を伸ばして座れるならその方が楽です。専用のフットレストを用意して靴を脱いで乗せてもいいですし、小さめの収納ケースを置いて土足のまま足を乗せてしまうのもよいでしょう。

「オフィスで座る」という事に対して、できる工夫は色々とありそうですね。



オフィス家具のチェア選び

 

おわりに

 オフィスチェアの世界はたいへん奥深いです。これが中古のオフィスチェアとなりますと、最新シリーズこそ手に入りませんが、廃盤品と出会える可能性もあり、一層奥が深いといえます。

 本稿がユーザーさまのよき買い物の助けとなれれば幸いです。